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花は咲いても、根は育たない

「美しさ」とは何か。
ぼくの幼い頃からの創作活動において最も重要な要因なのだけど、いや、だからこそというか、粗方の物事や考え方の方向は同じでも、都度こころの変化が起こるのが嬉しい悩み。そういう曖昧な個人基準がある。

ひとことで「美しさ」といっても、
ぼくはどういうものに美しさを感じるのか。
そして、その美しさはどこから来ていることなのか。
それを何に感じるのか。

まず何かを美しいと感じたとき、その美しさは、どこから生まれたものなのかなと考える。時代毎の俗識と経済構造の階調のようなもので、美しさの基準や俗識とは適当なもの。さまざまな原因や理由があって、常に変化し、その時代毎の感覚に左右されている。たった40年の中でも目まぐるしく変わるのだから。

少し角度を変えてみる。
ぼくにとって身近なもの、好きなものでいえば、
絵画や彫刻、文学、造形、舞台、音楽といったように、さまざまな職業のひとつひとつに美しさがある。これらの作品や歴史に触れていくうちに、さまざまな原因や理由などによって、差別との関係が根深いことに慣れている感覚があった。いや思い出すこともあった。
芸術の話だけではなくて、社会の歴史的過程で形作られた身分差別をされてきた人たちに、地域に、国に、長い間、経済的、社会的、文化的に低い状態に置かれることを強いられ押しつけられてきた職業や役割というものもが露骨にある。(今回このあたりのことはさらっとします。)

それを許しているわけではないし、
現代社会において適切な表現ではない一面もあるかもしれないけど、
ぼくは、そこに美しさを感じてしまうことがある。
そこには強く、逞しく、誇りをもって生きる人が多いことを認識してしまっている。
だから美しさを語るためには、おいそれとはいかないなということ。

ぼくはこういうものに美しさを考える。
「人間の歴史が関わり、人間の内面に強く関係しているか。」
ぼくはこういうものに美しさを考える。
「人間という生きものの、内面、奥底に流れているものが、外面に現れるのか。」
ぼくにとっては、そうでなければいけないこと。
たとえば絵画にしても、時代に沿った岩砂や炭などの顔料や、壁や布など生地があり、鉛筆画やアクリル画など、無数の画材や技術があるけれど、それぞれ美しさが違う。
つまり、美しさとはそれくらい、ときどきのものであり、他人との共通基準なんてない。
いつだって、適当な時機に、人間が発見していくもの。そういうものだからいい。
今この時代に多くの需要はあれど、この先に定着しなそうなものに溢れているから尚更。

悠然と構えた美術館に収まっている美術品だけが美しいとは思わない。
有名でなければ美しくないなんてことは有り得ない。
有名になれば多くの資料や情報が出回るし、それを手にした人は表面上の学びをしてしまう残念さがある。
この流れにも権威のような圧迫をぼくは感じる。

そう考えると、権威を持ってはいけないはずのものが、美しさではなかろうか。
日本の三大祭りや、五大祭りとかって、経済的な権威づけ。
たくさんの人が見に来てくれて、たくさんお金が使われて、地域は活性化する。
来場者数とか、経済効果とかの数字にばかり着目される。
でも、そのお祭りが、もともとどういう意味を持っていたかについて、
みんな、忘れているのではないかと思う。

逆に、どれだけ小さな規模の祭りであっても、
地域にとって、極めて大切なもので、歴史の変化に惑わされることもなく、権威とは何の関係もない、無名の祭りの凄みみたいなものは地方に立ち寄ると感じることがある。きっと、その祭りに経済的な権威をもたせてしまったら、意味を忘れていくのだろう。

だからぼくは、権威とか巨額な経済活動ではない場所に美しさを感じる。
ただ直向きに、ただ理想を、ただ維持を、継続を、伝承を、そこにその生命の魅力が、本質が見え隠れているということを感じたら幸せな時間に変わる。魅了される。
そこで、ぼくは地球に生まれてきた生きもので、たまたま地球に生み落とされた一個の生命で、他の生物や自然と同じということ。人間が、人間だけで成立するはずない。もともと一緒なの、他の生きものと、何も変わらない。

ぼくにとって、小さな縁があって、
そこに美しい人がいて、美しい草花が咲いて、美しいどうぶつが鳴いて、
その美しさがどのように生まれたのか、ぼくは知りたい、見届ける努力をしたい。
ぼくにできることなんて、地球の中を流れる川の、ほんの上澄みの水を、
この手で掬って、こぼれないよう必死に留めて、
美しいものたちのところへ、少しでも多く届けれることぐらい。
決して自分では何も生みだせない。

そんなことを考えていたら、
もっと人が美しくて、もっと草花が美しくて、もっとどうぶつが美しいと感じるのだろうか。
花を咲かせて、根を育ててみたい。

matryoshka / Sacred Play Secret Place

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